
「レオロジー」は面白い!
- 松本 篤
- MATSUMOTO Atsushi
- 工学部 講師(高分子化学)
Profile
愛媛県出身。2012年大阪大学理学部化学科卒業。2014年、大阪大学大学院理学研究科高分子科学専攻博士前期課程修了。2017年大阪大学大学院理学研究科高分子科学専攻博士後期課程修了。2017年より、沖縄科学技術大学院大学博士研究員(ポスドク)、2021年より、福井大学学術研究院工学系部門生物応用化学講座助教、2024年4月より現職。
研究者詳細ページ
万物は流れる
身の回りによくあるモノ、例えばプラスチック製品とか窓ガラスはふつう硬いと感じます。でも、うん万年とか経つと、べちゃっと流れていきます。なぜ流れるのか?というのを、モノの分子構造から解明する。その物理法則を見つけるという研究を行っています。
この分野は「レオロジー」と言います。「流れの学問」とも訳されますが、「流れ」にとどまらず粘り気、とろみやひび割れなど物質の変形をめぐる幅広い性質に関わる研究です。工業的な応用としては、さまざまな条件、時間と変形との関係を表す物理法則(方程式)を見つけることで、製品の変形しやすさなどを予測、コントロールでき、商品開発や品質の安定に寄与します。より丈夫なプラスチックの開発などはもちろん、食べ物ののどごしや化粧品のしっとり感、塗料の伸び、医療では血液を使った検査にも関わり、実に幅広い分野で適用できます。

セルロースナノファイバーが流動方向に配向する様子を複屈折測定により可視化
世界で未解明な研究も
プラスチックやゴムなどは、低分子が共有結合でつながった、高分子と呼ばれる巨大分子でできています。私は主に、その高分子のレオロジーを研究しています。中でも、分子の一部にプラスやマイナスの電気を帯びている高分子電解質をめぐるレオロジーは、世界的にもあまり研究されておらず、やりがいのあるテーマです。私の研究は基礎研究なので、高分子電解質の構造と粘度の関係を明らかにして、物理法則を確立するのが目標ですが、それが何につながるのか。例えば、みたらし団子のたれ。とろみをつける添加物に「キサンタンガム」(安全なものです)という高分子電解質があります。その分子構造ととろみの関係を方程式で示せれば、とろみを自由自在に操れる、という応用に広がります。
一番面白いのは、仮説をたてて、実験したときに自分の仮説が正しいと思える結果が出てくる瞬間です。研究員時代に恩師から「自分が培ってきたところの端を攻めるような研究をしなさい」と言われたことがあります。基礎研究は、すぐに役立つわけではないけれど、レオロジーという分野は可能性が幅広い。地道に研究を進め、いずれは教科書に自分の名前が載るような成果を出したいです。
食事に合う日本のウイスキーと、インドの炊き込みご飯?ビリヤニにハマっています。リクエストすると妻がバスマティ米とフランス製の鍋で作ってくれます。
